セブンスセンス(7th Sense)

自己肯定感を高める5つのポイント

障害を持つ子どもたちにとって最も大切なのは、「自己肯定感」を高めることです。特に発達障害は「障害」である以上、根本的に治ることは難しいものの、適切なサポートによって改善が可能です。その改善の鍵を握るのは、子ども本人だけでなく、親の幼少期からの関わり方です。子どもが物事に前向きに取り組めるようになるためには、己肯定感を高め、レジリエンス(折れない心)を育むことが不可欠です。「どうせ無理」と思ってしまう状態では、成長や改善は難しくなります。

自分が他の人と違うと感じることで、学校や社会に居場所を見いだせず、時には家庭内でも孤独を感じることがあります。実は、障害そのものよりも、障害によって生じる「違和感」が二次的な問題を引き起こすことの方が大きな影響を及ぼします。

特に発達障害のある子どもは、特定の分野で才能を発揮する一方で、苦手な分野では「自分はできない」と無力感を抱きやすい傾向があります。この無力感が蓄積すると、不安障害やうつ病といった二次障害につながる可能性があります。最近の研究では、ADHD(注意欠如・多動症)の子どもの約30%がうつ病を発症していると言われています。これは生まれつきの特性ではなく、理解されないことが原因の二次障害であり、適切な支援によって防ぐことができます

あなたは唯一無二の素晴らしい存在です。この世に生まれてきてくれて「ありがとう」。あなたには、あなたにしか果たせない人生の使命があります。それに気づくための土台を築いていきましょう。
障害児の自己肯定感を高めるための「5つのポイント」をご紹介します。

「存在」歌: ミネハハ 作詞・作曲: 西岡博史
~是非BGMを聞きながらお読みください~

① 言葉と態度で愛を示す

まず大切なのは、「親の愛情をしっかり伝える」ことです。これは、障害のある子どもの自己肯定感を育む上で、最も重要な要素です。
子どもにとって、最も影響力のある存在は親です。親からの愛情を感じることで、「自分は大切な存在だ」と実感します。例えば、子どもが「今日、先生に褒められた!」と話したとき、その本当の喜びは「親が喜ぶ姿を見ること」だったりします。このとき、「そんなことで喜ぶの?」「○○くんの方がもっとすごいよ」といった言葉は厳禁です。これらの言葉は、子どもの自己肯定感を削いでしまいます。
愛情を伝える方法は、シンプルな言葉で十分です。

•「生まれてきてくれてありがとう」
•「いつも感謝しているよ」
•「○○がいてくれて幸せだよ」
•「大好きだよ」

また、言葉だけでなく、スキンシップを伴うことで、より深く愛情を伝えることができます。「8秒間ハグ」や「寝る前の優しい声かけ(5分間暗示法)*1」などを取り入れると、子どもの心に響きやすくなります。

「8秒間ハグ」は、よく頑張ったね、と感じたら、およそ8秒間、意識して強く抱きしめながら、ポジティブな言葉をかけてあげる方法です。「5分間暗示法」は、子どもが眠る直前の5分間に、ポジティブな言葉をかけることで、潜在意識に働きかける方法です。脳科学の研究*1では、眠りに入る前の状態(シータ波が優位な状態)は、暗示を受け入れやすい時間帯であることが示されています。この時間に「あなたは大切な存在だよ」「今日もよく頑張ったね」と優しく語りかけることで、子どもの自己肯定感を高める効果が期待できます。

さらに、この方法は子どもだけでなく、親自身のセルフヒーリング効果もあります。子どもに温かい言葉をかけることで、親の心も穏やかになり、日々の育児のストレスが軽減されることが期待できます。親子の絆を深めながら、お互いに癒しの時間を持つことができるのです。

② 頑張る過程・姿勢を「褒める」

応用行動分析(ABA)の理論では、行動が強化されることで、望ましい行動が増えることが分かっています。特に「ABCフレームワーク」(Antecedent: 前兆、Behavior: 行動、Consequence: 結果)を意識することで、子どもが良い行動を継続しやすくなります。
例えば、子どもが玩具を片付けたら、「すごいね!きちんと片付けられたね!」とすぐに伝え、笑顔で拍手を添えるとよいでしょう。このように、言葉と行動を組み合わせることで、子どもは「自分はできる」と自信を持つことができます。

しかし、皆さんの行動を思い返してみてください。習慣化させたいことが出来なかったときに、叱っていませんか?「何度言ったらできるの!」「前も言ったよね!」「いい加減やりなさい」言われた方は不快なだけですね。次は気を付けよう!とは思わないです。つまり習慣化は不可能ということになります。 当然強制的にやらせても習慣化は可能です。ただ、それは習慣化ではなく、「相手が見ている時だけはやる」という行為になります。つまり親や先生が見ているときはやるけど、見ていないのならばやらない。これこそ友達間のトラブルになりそうですね。そのような子になって欲しいと願う親はいないでしょう。

ですから、少し大変かもしれませんが、習慣化のためには、具体的行動をした際に1分以内にその行動に対して称賛する「1分間ルール」*2を徹底して褒め言葉を意識して送ってあげてください。

但し、注意すべきことは、結果ではなく、努力の過程を褒めることが大切です。そのためには、普段から子どもの頑張りを見逃さないように意識し、しっかり見守ることが必要です。

結果ばかりを評価すると、子どもは「できなかったときにごまかす」ようになってしまいます。さらに、うまくいかないことが続くと、「自分はダメな人間だ」と短絡的に考えてしまうこともあります。子どもにとって「ダメな人」とは、「親に認められない人」と同じ意味になってしまうのです。

例えば、テストでカンニングをする子どもは、この心理が原因であることが多いです。もしそうした行動が発覚したら、責めるのではなく、次のように伝えましょう。
「お母さん(お父さん)は、点数の良さばかり褒めていたね。ごめんね、勘違いさせてしまったね。本当は、良い点数を取るために努力していたことがすごいって伝えたかったんだ。でも、伝え方を間違えてしまったね。」

子どもが親や先生の顔色ばかりうかがう環境では、自己肯定感はなかなか育ちません。親も結果に一喜一憂せず、努力している姿を全力で褒めてあげましょう

ここでのレッスンではお父さん、お母さんのお迎えの際に、子どもさんの前でお母さんやお父さんに、頑張ったことを声に出して褒めてあげることを意識しており、これは「1分間ルール」には反し、時間の経過がありますが、時を経て、自宅に戻る途中や、自宅に戻ってからその頑張って褒められたことの良い意味での復習をしてくださいね。「お母さんも確かに凄いと思ったよ」などと言ってあげることはとても良いことです。

また、ここで使用しているオリジナルの「集中力アッププリント」は、集中力・類推力・図形認知力・動作速度を向上させ、ワーキングメモリーを鍛えることを目的としています。しかし、それ以上に大切なのは、「過去の自分と向き合い、少しでも記録を伸ばそうとする意欲」を評価し、それをきっかけに自己肯定感を高めることです。

どんなに些細なことでも、頑張る姿勢をしっかりと認め、拍手を送り、褒めてあげてください。

③ 一人の人間として意見を求め、尊重する

ニュースを見たときや学校での出来事について、「どう思った?」「どうしたいの?」と子どもに尋ねることは、自己肯定感を高める魔法の言葉です。子どもの意見を大切にすることを意識し、「こうしなさい」と親の考えを押し付けるのは避けましょう。こうした会話を重ねることで、親子の言葉のキャッチボールが生まれ、絆が深まります。アクティブ・リスニング(積極的傾聴)とは

•質問を投げかける
•相槌を打つ
•感情を言葉にする
•話を深めてフィードバックする

といったコミュニケーション方法を指します。例えば、子どもが服やおもちゃを選ぶとき、親が意見を言うのは良いですが、押し付けてはいけません。また、小学校に上がると、車や冷蔵庫といった家族で使う高額なものを選ぶ際にも、親として「どちらになっても良い」と思える場合は、ぜひ「どちらがいいと思う?」「どうして?」と尋ねてみてください。自分の意見を取り入れてもらえることで、子どもはその物を大切にし、「自分は大切にされている」と実感します。このような経験が、子どもが自ら考え、行動する力を育む第一歩となるのです。

④ 欠点克服ではなく、長所を伸ばす

周囲と比較するのではなく、子ども自身の「ストレングス」(「強み」)や「個性」に目を向けましょう。

•得意なことを見つけ、伸ばす。
•興味を持ったことに寄り添い、一緒に楽しむ。
•できないことを責めるのではなく、工夫して支援する。

こうした関わりが、子どもの自己肯定感を大きく育てます。

例えば、ここに5段階の絶対評価による成績表があるとします。
「1教科が4」、「1教科が2」、「その他は全て3」だった場合、かつての日本の教育では、平均値を上げることが重視され、欠点を克服することに意義があると考えられていました。また、以前の成績評価は相対評価が主流であり、クラス内での順位付けによって「5は7%」「4は24%」「3は38%」・・・といった割合で成績がつけられていました。しかし、クラス全員が努力しても相対的な順位が変わらないという矛盾が生じるため、現在では学習の理解度に基づく絶対評価が一般的になっています。

ここで、以下のような考え方を持っている人は、視点を変えてみることが大切です。

•「1教科だけ2がある。この教科さえ努力すれば、全て3以上になる」
→こうした考え方は問題です。成績はあくまで現時点での評価に過ぎません。「1教科だけ2」ということに囚われるよりも、伸ばせる部分に目を向ける方が良いでしょう。

•「1教科だけ4がある」
→素晴らしいことです。「この教科は好きなの?」「何が楽しいの?」と前向きな質問をして、この教科をさらに伸ばし、「1教科だけ5」を目指すのも良いでしょう。

もちろん、成績はあくまで結果の一つであり、学ぶきっかけになれば十分です。他人からの評価にこだわる必要はありません。たとえ学習教科の中で特筆すべき成績がなくても問題ありません。これからの社会では、平均的にできる人よりも、それぞれの分野で突出した才能を持つ人が評価される時代です。大切なのは、他人の評価に左右されることなく、子ども自身が没頭できるものを見つけ、その時間に幸せを感じられるように支えてあげることです。

また、子どもの興味に対して、「なるほど、すごいことに気づいたね」と肯定し、興味を深められるような環境を整えてあげることが大切です。
そして、親も興味を持って、子どもの疑問にも、わからないことはわからないまま放置せず、一緒になって調べてみることも大切です。知らなかったことを知ることこそ、これが学びの楽しさであり、醍醐味です。

⑤ 親も人間、神様でもありません

わかっていても、できないことはたくさんあるものです。「私がダメだから」と自分を責めてしまう方もいますし、「マイナス思考はダメだ」と考えすぎて、さらに負のループに陥ってしまうこともあります。
「家族に理解してもらえない」とお母さんが孤立してしまうケースも少なくありません。しかし、子育ては「長きにわたる自分育て」でもあります。
そんなときは、どうか一人で抱え込まずに声をあげてください。行政に助けを求めるのも、カウンセラーに頼るのも、信頼できる園や学校の先生に相談するのも、どれも大切な選択肢です。
私たちは、そうした受け皿の一つになりたいと願っています。

子どものレジリエンス(折れない心)を育むには、親自身のレジリエンスを育むことが欠かせません。ときには、今まではできなかったことが、親自身も「今日はできた」ことがあれば、自分自身に対して「よくやったね」と自身に呟き、労ってあげてください。

何度でもお伝えします。子どもは「自分には特別な才能や興味があり、それを親が受け入れ、違いを認めてくれている」と感じることで、自己肯定感が大きく育ちます。そして、その才能を開花させる鍵は、親が握っています。
たとえ誰も信じてくれなくても、私だけはどんなときもあなたを信じる――。たとえ心が折れそうになっても、子どもの後ろ盾となる覚悟だけは失わないでください。子どもがその後ろ盾を感じることができれば、それが「生きる力」となります。だからこそ、どんな日でも最後には「親の愛情」を感じられる状態で一日を終えられるよう意識してください。それを続けることで、子どもの自己肯定感は少しずつ高まっていきます。

一緒に学び、一緒に泣いて、一緒に笑えますように…。

*1)Niedermeyer (2005): シータ波がリラックスや学習、記憶のプロセスと関連していることを述べています。

Lopez et al. (2012): 睡眠と記憶の統合に関する研究では、入眠前の暗示が記憶の定着に影響を与える可能性を示唆しています。

Rasch & Born (2013): 夢や睡眠中の脳の活動が記憶や感情の処理に影響を与えることを論じています。

*2)Ken Blanchard & Spencer Johnson (1982) :『1分間マネージャー(The One Minute Manager)』で、良い行動をすぐに認識し、具体的に褒めることが重要」と述べられています。これは組織運営や人材育成においても、習慣化の原則として有効とされています。

Lattal, K. A., & Gleeson, S. (1990): 報酬の遅延が長くなるほど、行動の強化効果が低下することが確認されています。つまり、行動直後(1分以内)に褒めることで、行動が定着しやすくなると考えられます。

Schultz et al. (1997): 報酬が予測通りに得られるときにドーパミンが放出され、学習が促進されることが示されています。これにより、すぐに褒めることで「行動=ポジティブな結果」と脳が学習しやすくなることが考えられます。